SCCR(短絡電流定格)とは?その1
更新日:2025年09月08日
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更新日:2025年09月08日
ー対応やUL規格との関係を解説いたしますー 海外、特に北米での機器設置の際にSCCR(短絡電流定格)を表示することが義務付けられています。 当記事ではSCCRの概要から対応まで詳しく解説いたします。
SCCR(短絡電流定格)とは、
Short Circuit Current Rating の頭文字をとったものであり、
モーターなどの機器や各種動力回路を持つシステムが損傷を受けることなく
接続できる公称電圧における推定の対称故障電流のことです。
簡単にお伝えすると、
短絡電流に耐えられる限界の電流値のことです。
電気事故による火災を防止するためです。
短絡電流が流れた際に生じる高電流は対象の機器が故障するだけではなく、
隣接する他の機器にまで危害を与えることになります。
また現地などで電気事故が生じた場合に重大な事故を引き起こす恐れがあります。
二次被害を発生させないためでもあり、安全対策として欠かせません。
元々米国では工場に設置する受電設備のエネルギー供給能力を
大きくする傾向があります。
そのため、負荷や配線の短絡や地絡事故が発生し、
遮断装置や保護機器(ブレーカ、ヒューズ等)の
遮断能力を超える故障電流が流れた場合に、
配線や機器の焼損、過大なアークフラッシュの発生等により、
建物火災や人命損傷など、電気事故による重大な被害が、
他国より多発する状況が生じました。
(以下は当社で行った短絡実験の映像です。
衝撃波と共に激しいアークフラッシュが発生します。
事故が起こった際の強烈さがよくお分かりいただけると思います。)
これらの被害を予防するためにSCCR定格が制定され、
産業用制御盤にSCCR値の表示が義務付けられることとなったのです。
SCCRの取り扱いについては、十分な注意が必要となります。
対象となる機械・機器は地域ごとの規格によって異なりますが、
安全のためいずれの地域においても基本的には対応が必要です。
NEC/NFPA70(2005年度版)のArticle409.110Marking項目で、
工業用制御盤にSCCR値を表示することの義務化について言及されています。
最新版のNEC/NFPAでも同様の要求となっています。
そのため、設置する場所に適合したSCCR値の装置を納入する必要があります。
注:NFPAとは「National Fire Protection Association」(全米防火協会)の略称です。
火災や電気事故等を防止するため、[NFPA番号]で示される規格を策定しています。
その中の一つであるNFPA70は別名NEC「National Electrical Code」(米国電気工事基準)と呼ばれ、
電気工事についてまとめられたものです。
さらに、複雑な電気配線になる産業用機械については
NFPA79(米国産業機械用標準)にて規定されています。
【具体的な要求内容】
▶NEC Article 409より
409.22 短絡電流定格(409.22 Short-Circuit Current Rating)
「産業用制御盤は推定短絡電流が409.110(4)に従って
表示されたSCCRを超える場所に設置してはならない」と記述されています。
NEC要求事項は産業機械用電気規格(NFPA79)、産業用制御盤(UL508A)でも同様に適用されます。
▶409.110(4)より
「産業用制御盤のSCCRは、aかbに基づくこと」とされ、
a.UL認証登録され、ラベル表示された製品のSCCR
b.承認された方法を用いて確立したSCCR
に基づいた表示が求められています。
→bのSCCR承認された方法の情報として
「ANSI/UL 508A、産業用制御盤規格のSupplement SBは、承認された方法の一例である」と引用されています。
※2025年3月現在
米国において州法として採用している州はそれぞれ異なります。
州の最新情報は NFPA のホームページで確認できます。
下記URLをご参照ください。
https://www.nfpa.org/education-and-research/electrical/nec-enforcement-maps
SCCRは国際規格IEC(International Electrotechnical Commission国際電気標準会議)に
おいてもて規定されています。
電気装置の安全を確保に関する規格であるIEC60204-1の2016年の改定で、
より具体的な短絡電流定格の算出方法が規定されるなど、内容も強化されました。
さらに、欧州の統一規格であるEN規格においても2018年にIEC規格を踏襲した、
EN60204-1:2018が発行されています。
韓国の国家標準であるKS規格や中国国家標準規格 GB規格においても同様です。
韓国や中国と同じく、日本においてもIEC60204-1をもとにした
JIS B996000-1:2019にSCCRの規定が記載されています。
北米や欧州(EU)において、SCCR対応をせずに電気事故が発生した場合には
原則エンドユーザーの責任になることが、NFPA79に規定されています。
一方でメーカーの義務としてはNECにSCCR値を表示することではありますが、
エンドユーザーがSCCR値を要求していたにも関わらず、
提供した機械や盤のSCCRが要求を満たしていなかったことで事故が発生した場合には
メーカー側に責任が発生します。
さらに装置、盤が稼働されないと、損害賠償を請求されるリスクも大いにあります。
SCCRに関する知識をギュッとまとめた内容を
「その1」としてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事が少しでもお役に立ちましたら幸いです。
まだまだご紹介しきれていないので、「その1」に続き
SCCRの計算方法や裏技についてを「その2」でご紹介したいと思います!
ぜひ合わせてお読みください!!
「その2」を読まれる方はこちらへ
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