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SCCR(短絡電流定格)とは?対応やUL規格との関係も解説

更新日:2022年01月06日

海外、特に北米での機器設置の際に必要となるのがSCCR(短絡電流定格)への対応です。 当記事ではSCCRの概要から対応まで詳しく解説いたします。

 

 

SCCRとは何か

SCCRとはモーター、ヒーター、照明などの各種動力回路機器が持つ
短絡電流に耐えられる限界の電流値のことです。

 

Short Circuit Current Ratingの頭文字をとったものであり、

日本産業規格(JIS B9960-1)では「短絡電流定格」と翻訳されています。

 

電気事故によって過大電流が流れても火災が起きないよう
保護協調が取れる能力を表します。

 

  

つまりその短絡電流値までなら機器が故障しても、
隣接するその他の機器へ危害を及ぼさないという基準です。

  

SCCRが規定された経緯

元々米国では工場に設置する受電設備のエネルギー供給能力を
大きくする傾向があります。

 

そのため、負荷や配線の短絡や地絡事故が発生し、
遮断装置や保護機器(ブレーカ、ヒューズ等)の
遮断能力を超える故障電流が流れた場合に、
配線や機器の焼損、過大なアークフラッシュの発生等により、
建物火災や人命損傷など、電気事故による重大な被害が、
他国より多発する状況が生じました。

 

(以下は当社で行った短絡実験の映像です。事故が起こった際の
アークフラッシュの強烈さがよくお分かりいただけると思います。)

  

これらの被害を予防するためにSCCR定格が制定され、
産業用制御盤にSCCR値の表示が義務付けられることとなったのです。

  

SCCRと規格の関係

対象となる機械・機器は地域ごとの規格によって異なりますが、
安全のためいずれの地域においても基本的には対応が必要です。

  

米国(アメリカ)

NEC/NFPA70(2005年度版)のArticle409.110Marking項目で、
工業用制御盤にSCCR値を表示することの義務化について言及されています。

 

SCCRの判断基準はNECの409条に規定がありますが、
産業用制御盤規格であるUL508Aの補足事項SB4.1に記載された
短絡電流の規定を使用することが認められており、
こちらを利用することが一般的です。

 

最新版のNEC/NFPAでも同様の要求となっています。

 

そのため、設置する場所に適合したSCCR値の装置を納入する必要があります。

注:NFPAとは「National Fire Protection Association」(全米防火協会)の略称です。
火災や電気事故等を防止するため、[NFPA番号]で示される規格を策定しています。

その中の一つであるNFPA70は別名NEC「National Electrical Code」(米国電気工事基準)と呼ばれ、
種々の電気工事についてまとめられたものです。

 
さらに、複雑な電気配線になる産業用機械については
NFPA79(米国産業機械用標準)にて規定されています。  

 

欧州・アジア

  

SCCRは国際規格IEC(International Electrotechnical Commission国際電気標準会議)に
おいても規定されています。

 

電気装置の安全を確保に関する規格であるIEC60204-1の2016年の改定で、
より具体的な短絡電流定格の算出方法が規定されるなど、内容も強化されました。

 

さらに、欧州の統一規格であるEN規格においても2018年にIEC規格を踏襲した、
EN60204-1:2018が発行されています。

 

韓国の国家標準であるKS規格や中国国家標準規格 GB規格においても同様です。

 

日本国内

韓国や中国と同じく、日本においてもIEC60204-1を踏襲した
JIS B9960-1:2019にSCCRの規定が記載されています。

  

SCCRに対応しないと?

北米や欧州(EU)において、SCCR対応をせずに電気事故が発生した場合には
原則エンドユーザーの責任になることが、NFPA79に規定されています。

 

一方でメーカーの義務としてはNECにSCCR値を表示することではありますが、
エンドユーザーがSCCR値を要求していたにも関わらず、
提供した機械や盤のSCCRが要求を満たしていなかったことで事故が発生した場合には
メーカー側に責任が発生します。

  

SCCRの計算方法(基本)

SCCRに対応するために、まずは機械・機器・装置、盤のSCCR値を算出することが必要です。

 

また、NEC(=NFPA70)でも制御盤へのSCCR値記載が設備・機械メーカーの責任として要求されています。

  

SCCR値の求め方の基本は非常にシンプルです。

 

主回路に接続されている各種の機器単体のSCCR値の中で最も小さい短絡電流定格が
機械・機器・装置、盤全体のSCCRです。

 

たとえば、以下の回路構成ではSCCR5kAがSCCR値となります。

 

さらに詳細な求め方に関しては以下のボタンから

パンフレット資料をダウンロードのうえP5~6をご参照ください。

 

  

SCCR対応で起こりがちな問題

SCCRへの対応でよく発生する問題には以下の2点があります

 

・工場やラインごとにSCCR値がバラバラ

電源供給キュービクルの変圧器と配線によって設置場所までの推定短絡電流が変わるため
工場やラインによってSCCRがそれぞれ違ってしまうということがよく起こります。

  

・高いSCCR値要求に対応できる部品がない

日本の制御盤部品メーカーの大半は高いSCCR値に対応した製品を作っていないが、
北米では50kA等の高いSCCRを要求されることも珍しくありません。

制御盤を製作する際に海外製の部品を集めるのは
時間も手間も金銭的にも
大きなコストがかかります。

  

以上を踏まえると制御盤単独でSCCR対応を行うのは
非常に難度が高いと言えます。

 

SCCR値を大きく表示する“裏ワザ”

裏ワザというと少々大げさですが、上記の計算方法以外にも
トランス(変圧器)を使って特定の条件を満たすことで
SCCR値を制御盤に大きく表示できる方法が認められています。

 

その条件とはトランス二次側の推定短絡電流よりも
トランス二次側の機器のSCCR値が大きいことです。

 

言い換えればトランス二次側の機器のSCCR値より
トランス二次側の推定短絡電流を小さくできればよいということです。

 

 

これにより、分岐回路に使われている機器のSCCR値が小さくても
トランス一次側ブレーカのSCCR値を制御盤に表示することができるようになります

 

要は一次側ブレーカのみSCCR値が大きいものを用意できれば
その値で表示可能ということですね。

 

  

ここから具体的な計算方法と事例を使って解説します。

 

 

トランスの推定短絡電流(ISC)は、インピーダンス(%Z)の逆数に
定格電流(IFL)を掛けることで求められます。

(逆数とは、分母と分子を入れ替えた数。
元の数にかけると“1”になります。3/5の逆数は5/3)

 

短絡電流(ISC)= ① %Zの逆数 X ② 定格電流(IFL

 

①インピーダンス(%Z)の逆数

例)%Z = 3%の場合、 3%=3/100 逆数は、100/3 になります。

 

② 定格電流(IFL)の算出方法

 ≪単相の場合≫ トランス容量(VA)÷ 2次側定格電圧(V)

 ≪三相の場合≫ トランス容量(VA)÷ 2次側定格電圧(V)÷√3

  

この数式を以下の事例に当てはめてみます。

 

 

まずは単相トランスの容量3kVA(3,000VA)を
二次側電圧の100Vで割ります。

定格電流値=3,000÷100=30A です。

 

そして、トランスのインピーダンス(%Z)を確認します。
今回は2.1%で計算します。
(メーカー提示がない場合は2.1%が引用できます。
布目電機はインピーダンス値の提示が可能です。)

 

推定短絡電流 ISC = 100/2.1 X 30≒1.43kA ですね。

 

つまり最小値の5kA(5,000A)を下回るので一次側ブレーカの35kA
SCCR値として表示できるということになります。

 

SCCR対策用トランスを選ぶ際の注意

上記の条件に当てはめて、数値さえ満たせば
どんなトランスでもいいというわけではありません。

  

北米で使用する以上、Industrial control transformer として
ULカテゴリXPTQ2でUL認証されたレコグニション認証品が必須になります。
 

また、基本的な考え方はシンプルとはいえ、
お客様個別の状況に対し適切な提案やアドバイスがなければ
火災事故や訴訟に繋がることもあります。

 

実際に当社が調査したところ、ネット上で検索して見つかる資料の中には
危険につながる内容ではないものの、現在では改定されている
古い内容のままのものも散見されました。

 

布目電機は海外規格対応のスペシャリストとして
常に業界をリードしてきました。

特にUL規格やSCCRの対応には豊富な実績と経験があります。

 

SCCRに関してお困りの際はぜひ相談先の一つに加えていただければ幸いです。

 

SCCRの問題を解決する製品も多数展開しておりますので
よろしければぜひパンフレットをダウンロードのうえご参考にしてください。

  

布目電機のSCCRソリューション

布目電機では他のメーカーに先駆けて北米UL規格への対応を進めてきた実績があります。

 

トランス(変圧器)を軸としたSCCRへの対応や独自にUL規格認証を取得したBusBarや
電気機器(ブレーカやMS等)のコンビネーション等を駆使して系統側で要求される
高いSCCR値に対応した製品でお客様の抱えるSCCR対応への問題を解決します。

  

各製品の詳細は以下のダウンロードボタンからパンフレットをダウンロードのうえ
ご確認くださいませ。

  

UL規格認証BusBar(バスバー)

布目電機が独自にUL規格認証取得したBusBarであればSCCR50kAまで対応することができ、
現地要求を満たすことが容易になります。

 【導入事例はこちら

 

 


Powerful Assisterユニットサブステーション

アメリカ・カナダの工場に屋内設置するNEC/NFPA70に適合の
ULリスティング認証を取得した低圧電力用の変圧器ユニットです。

【感動?のPowerfulAssistor開発秘話はこちら

 【導入事例はこちら 

 

電源側(給電側)と機械・設備側(制御盤)の中間に設置することにより、
短絡時に機械・設備側へ流れる大電流/短絡電流を低減させることができます。

 

 


SCCRリミッタ

アメリカ・カナダの工場に屋内設置する低圧電力用のヒューズ付ユニットです。
工場・電源側配線系統から要求されているSCCR値に対し、最大100kAまで対応することが可能です。

 

 


 

いかがでしたでしょうか。
もしもこの記事がお役に立ちましたら幸いです。

 

SCCRについて課題やお困りごとがございましたら、
ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。

 

 

 

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